ミーソン遺跡保存環境整備計画
背景
1999年にユネスコ世界遺産に登録されたミーソン遺跡は、ベトナム中部・南部に王国を築いたチャム族の聖地として、8世紀から13世紀にかけてチャムパー歴代各王により造営された宗教遺跡である。本計画は、遺跡来訪者に情報を提供すると共に、出土遺物の収蔵と調査研究活動支援を目的として、遺跡エリアの入口における展示棟、管理棟、便所棟の施設整備と保存修復用機材の供与、並びに展示物制作と展示設営に関する技術支援(ソフトコンポーネント)を行うもので、日本政府のODA文化無償資金協力により実施された。
プロジェクト内容
展示はサイトミュージアムとして観光客に遺跡を簡潔に紹介するため、解説パネルを主体に最小限の出土遺物と祠堂内部の復元モデルで構成されている。建築デザインは遺跡周辺の環境に調和する現代建築とし、外壁の石壁は自然石をスリット状に積上げることにより遺跡との類似性を表し、石の量感を軽減するイメージに留意した。展示棟は陽射しを遮る大きな庇の下に開放的なエントランスを挟んで展示室と収蔵庫を両翼に対称配置し、展示室側には川に張り出したテラスを設けて、見学者の憩いの場となるよう計画した。展示空間は人工照明に依らず、トップライト・ハイサイドによる自然採光と自然通風を最大限に活用し、維持管理費の低減を図っている。また、収蔵庫は一部を収蔵展示室として利用できるよう、エントランスに開かれた空間とした。