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シンド州農村部女子前期中等教育強化計画

背景

パキスタン国の教育指標は南アジア諸国の中で最低位にあり、全国の純就学率は初等教育57%、前期中等教育22%に留まり、MDGsの目標達成は困難とされていた。特に農村部女子の純就学率は初等教育50%、前期中等教育では僅か15%と、ジェンダー間、都市-農村間の格差が著しかった。その中でもシンド州は教育指標の多くが全国平均を下回り、特にジェンダー・地域間格差が大きく、その改善が喫緊の課題となっていた。
このような状況に対して、シンド州政府は基礎教育のアクセスと質の改善を目標とする「教育改革プログラム」を実施しており、シンド州14県を対象に133サイトの既存女子小学校(G1-5)を前期中等課程(G6-8)を含む基礎教育学校に拡張する計画を策定し、我が国に対してその実現に必要な施設の増設と教育用家具及び機材の供与に係る無償資金協力を要請した。

プロジェクト内容

本計画はシンド州全域に分散する133サイトから事前スクリーニングを通過した79サイトを対象に第1次調査が行われ、その結果を受けて南部地域と北部地域それぞれを対象とする2つのプロジェクトとして実施された。シンド州は南北500km、面積14万km2(東北+北海道と同程度)の広大な州であり、施工監理や治安面の適正規模から、最終的に南部6県31サイト、北部6県26サイトを対象に選定した。
実施はコミュニティ開発支援無償により現地企業を活用して行われ、施設は南北それぞれ3つのロットに分けて入札を実施、落札した現地企業2社により施工が行われた。施設は現地の標準的な工法・仕様に準じつつ、機能性、耐久性、施工性を重視した改良を加え従来の無償資金協力案件に比して大幅なコスト縮減を実現した。教室、校長室、倉庫で構成される農村型のシンプルな校舎であるが、女子就学のインセンティブとして多目的室を加え、PC機材を整備導入している。また、軟弱な地盤や酷暑となる気候への配慮に加え、キブラ(メッカの方向)を考慮した配置計画、足洗い場の設置、外部からの視線の遮断等、イスラム固有の配慮を設計に反映した。外観は柔らかいアーチの連続と赤みのあるポイントカラーを用いた女子学校に相応しい優しいデザインとしている。
なお、北部地域では入札残余金を利用して太陽光発電設備の整備を行った。

  • 計画地    パキスタン
  • 構造     鉄筋コンクリート造、平屋・2階建て
  • 延床面積   (南部)31サイト、39棟 合計9096.23㎡、(北部)25サイト、合計6953.20㎡
  • 施工     Salman Enterprises
  • 竣工年    2017年
  • 業務内容   基本設計、実施設計、工事監理