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ムプマランガ州小中学校建設計画

背景

南アフリカ国では、1994年に誕生した国民統一政府のもと、「復興開発計画」を策定して、人種間・地域間格差の是正を目指した社会・経済改革が進められていた。教育はその基本分野の一つと位置付けられ、平等な機会の提供と良質で統一された制度の構築を目標に教育改革を実施していた。
ムプマランガ州は全国でも最貧州の一つであり、成人の識字率・小学校修了率は全国最低位で、教育分野の開発が遅れていた。特に施設環境面の遅れは大きく、約半数の学校で4,800を超える教室が不足し、1教室当り生徒数は全国最多となっていた。多くの学校で劣悪な仮設教室や屋外での授業を強いられており、教育環境の改善が大きな課題となっていた。
州政府は基本的教育施設の不足への対処を重点課題の一つと位置付け、2005年次を目標とした教室不足の解消と施設の質的改善を謳い、年間200~400教室規模の施設整備を進めていた。しかし、人口の増加・集中と財政事情の悪化のため、十分な対応が困難な状態であった。そのような状況の中、南アフリカ国政府は我が国に対しムプマランガ州東部、北西部及び南部地域の最も学校施設整備の遅れた6学区を対象とした小中学校建設を要請してきた。

プロジェクト内容

要請の6学区21サイトは旧ホームランド又はタウンシップ(旧黒人居住区)に位置し、すべてが恒久的な施設を持たない学校・地区であった。本計画ではこれら全サイトを対象に現状の就学ニーズに基づく規模算定を行い、算定結果を踏まえて対象学年を設定し、サイトごとに小学校、統合学校又は中学校として計画を行った。小・中学校は同一のユニットを採用し、普通教室、管理諸室、便所に加えて、中学校には理科実験室及び図書スペースを設けた。広大な敷地を活用して建物はすべて平屋とし、現地の標準工法である煉瓦組積による壁式構造、鉄製建具、木既製トラスによる小屋組みに鋼板屋根材を組みわせた屋根構造等を採用し、現地の汎用建設資材を最大限活用することでローコストと高い維持管理性能を実現した。意匠的には化粧煉瓦積みの妻壁と軒柱をアクセントとして大地に溶け込むような建築を目指しており、周囲の景観との調和にも配慮したものとなっている。

  • 計画地    南アフリカ
  • 構造     組積造、平屋建て
  • 延床面積   8校新設、12校建替、232教室、合計18961㎡
  • 竣工年    2003年
  • 業務内容   基本設計、実施設計、工事監理